俺様同期の溺愛が誰にも止められない
桜の花がちらほおらと咲き始めた庭園に淡い桜色のワンピースを着て立つ私は、水野碧(みずのあお)
27歳の循環器科を専門とする内科医。
身長158センチのやせ型で、髪はカラーもパーマもしたことのない黒髪を肩の長さで切りそろえたボブスタイル。目は二重でぱっちりとしているけれど、口も鼻も小ぶりで存在感は薄い。
総合的に見ておとなしめで、集団の中にいても目立つ人間ではない。

「ご結婚おめでとうございます」
結婚式に参列した以上お祝いを言わないのもおかしいだろうと、私もタイミングを見て新郎新婦に近づいた。

「忙しいのにわざわざありがとう」
満面の笑顔で応える新郎は、飯島林太郎33歳。大学病院の内科医。
そして、
「水野先生、ありがとうございます」
幸せそうに微笑むのは、真っ白なウエディングドレスを着た新婦の茉子さん25歳。
同じ病院に勤める看護師だった。

新郎である飯島先生と私は、同じ大学でサークルの先輩後輩として知り合い仲良くしてもらった。
先生が卒業してからもOBとして付き合いは続いていたし、その後私が卒業してからは指導医としてもお世話になった上司。
そして、私が8年間も片思いを続けてきた相手でもある。

「式の後はそのまま東京へ行かれるんですか?」

この春東京の大学病院へ転勤となったことを機に、式を挙げた飯島先生。
当然新婦の茉子さんも一緒に行くらしい。

「ああ。ギリギリまで引継ぎをしたおかげで、明日の朝大阪を立つ予定になっているんだ」
「そうですか、どうぞお元気で」
「ああ、水野先生も元気でな」
「はい、今までお世話になりました」
私は精一杯の笑顔で、笑って見せた。
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