俺様同期の溺愛が誰にも止められない
俺は子供の頃から勉強が好きだった。
東京都内の開業医の息子として生まれたせいで周囲からのプレッシャーもあったが、知識が増えるのは楽しかったし、それ以上にいい成績をとり周りから褒められるのがうれしかった。
褒められたくて勉強し、どんどんと成績が上がっていく。小さな頃はそれを繰り返していたように思う。
父の勧めるままに私立中学高校へと進み関西の有名国立大学医学部にストレートで入った時点で、成績では誰にも負けないのだというおごりが少なからずあった。
そんな俺が生まれて初めてテストの成績で負けたのが彼女、水野碧だった。
ただし負けたのはペーパーテストだけで、実習を加味した総合評価での彼女の成績は酷いもの。
頭がいいんだからもう少し器用に生きればいいのにと常に感じていたが、人一倍努力してもうまくいかずそれでも決して諦めない彼女に感心もしていた。
もし自分が同じ立場にいれば、おそらく挫折してドロップアウトしていたことだろう。
その位、彼女は追い詰められ苦しい状況にいた。
そして、そんな彼女をいつも気にかけサークルにも誘ったのが飯島先輩だった。
穏やかな性格で誰にでも優しかった飯島先輩が、田舎から出て来たばかりの彼女にとって唯一の味方に思えたことだろう。
物静かな性格ゆえにあまり目立つこともなく飯島先輩も気が付かなかったようだが、彼女は大学生の頃から飯島先輩のことが好きだったのだと思う。
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