俺様同期の溺愛が誰にも止められない
いつまでも自然体の彼女 side素晴
「ねえ、歯磨きしてもいい?」
「あ、ああ」
俺はバスルームを指さした。

「ありがとう」
自分のカバンから携帯用の歯ブラシを取り出した水野碧は、嬉しそうにリビングを出て行った。

しかし、普通この状況で歯磨きしようとか思うものだろうか。
もちろん綺麗好きは大歓迎だが、物事の優先順位というか、今何をすべきかの感覚が少しずれている気がする。
まあ、それもまた彼女らしくもあるのだが。

ブブブ。
また、彼女のスマホにメッセージだ。
見ると相手は病院の同僚からで、来週の休みを変わってほしいという内容。

「ったく、はっきりと断ればいいものを」

人がいいと言うか何と言うか、同僚ばかりか後輩にまでいいように使われている彼女に時々腹立たしささえ感じてしまう。
昨日だってそうだ。
当直明けで眠っていないくせに、ひきつった笑顔で注がれた酒を飲み続ける姿が見ていて痛々しかった。
そもそも、片思いしていた相手の結婚式なんて出る必要はないだろう。
たとえそれが直属の上司だったとしても、当直だったことを言い訳に欠席することだってできたはずだ。
それなのにわざわざ出てきて酔いつぶれてしまった彼女を放置することもできず、俺が会場から連れ出す結果になった。
多少強引に連れだしたせいで抵抗もされたが、意識を失った彼女をマンションへと連れて来られたことは俺にとっては大満足だった。
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