俺様同期の溺愛が誰にも止められない
私だって、今日のために服を新調しようと考えていた。
さすがに高級ブランドの物は無理でも年相応の落ち着いた服を買いたいと思っていたけれど、忙しくてその時間がなかったのだ。

「お、これって、水野が酔いつぶれて運ばれた時の服だろ?」
「ちょ、ちょっと、変なこと言わないでよ」
優紀とは反対側の左隣の席に座った人物に反応して声が大きくなった。

「何で、事実だろ?」
「それは・・・そうだけれど」

確かに、この桜色のワンピースで大学の謝恩会に行った。
これで医学生が終わり医者になれるのだとの解放感で、みんな大騒ぎだった。
普段はお酒を飲まない私も周りにすすめられて、結構飲んだ。
そして、急性アルコール中毒で運ばれた。
それは私にとっての黒歴史でしかない。

「そんなに無理して来なくてもいいだろうに」
前を向いたままボソリとつぶやかれた言葉に、グラスを持つ私の手が止まった。
< 5 / 198 >

この作品をシェア

pagetop