カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
 そのとき、カッカッカとヒールの音がして、
「久しぶり、瑠璃也」
 とハキハキとした声が飛んできた。

 瑠璃也の顔が明らかに曇るのが分かり、私は不思議に思う。
 私たちが振り返るまでもなく、その人は話の輪にスッと入ってくる。ビスチェ風のドレスを着たスラッとした女性だ。強気な眼差しが印象的で、その視線はまず私に向けられた。

「初めまして、滝本美亜です。瑠璃也とは遠縁で、古くからの知り合いってところ」と言ったあとには、
「水樹白那です」
 と私が返すのを待たずに瑠璃也に詰め寄っていく。

「瑠璃也がステディを連れてきているっていうから、気になって来てみれば。彼女は、随分世俗的魅力の子って感じね」
 と言うのだった。

 世俗的魅力とは?
 世俗は貶し言葉?
 魅力は褒め言葉?
 それとも皮肉?
 と私の頭の中には疑問符がたくさん浮かぶ。

 最終的には瑠璃也とは格が合わないってことかな、と理解した。でも、端からビジュアルレベルで瑠璃也と同列世界に生きているとは思っていないので、気にならない。

「美亜、そういう個人的な評価を簡単に口にするのは、正直聞いていて気分悪いな。白那に失礼だし」
 と瑠璃也は言う。浮かない顔はさらに浮かなくなっていく。

「本当のことでしょ。どうしてその子なの?瑠璃也との釣り合いなら、私の方がずっと取れていると思う」と言うのだった。
 なるほど、瑠璃也のことが好きなんだ、と思った矢先に、翼が横からこそっと耳打ちしてくる。
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