カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
 長い睫毛に囲まれた、良く光る黒い瞳が近づいてきたので、私は目が離せなくなる。軽く唇に触れたのは、綿のような軽い感覚だった。

「俺の全部やるから、お前の全部よこせ」

 言っている意味も不明だし、行動も不明だ。

「出会って数分でチュー。スッゴイなラブコメ」
 と実況する彰文の言葉がなければ、私は何があったのか把握できなかったと思う。

 ただ、その言葉が耳に入ったとたんに、私の心はスッと冷めてしまった。
 瑠璃也の胸を両手の平で押す。

 瑠璃也の視線が注がれるのを感じ、私は視線を真正面から合わせる。

 この上ないタイプで、推し活には申し分ない人だけど、もう、数分で無理だ。

「だいっきらい!」

 私は瑠璃也の頬を手のひらで打ち、逃げるように走り去った。
 それが、私と紫陽瑠璃也の出会いだ。
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