カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~

今は保護者として

 その日から寝る前のハグはなくなり、白那は触れ合うことに怯えをしめすようになる。キッチンで腕が当たる程度のことでも、ビクッと身体を震わせるのだ。ヤバい、と思う。白那のメンヘラモードが炸裂していると思った。

 今は触らないで、とも言われないし、明らかな拒絶はないけれど、緩やかに心が離れている感じがある。この頃の白那に感じるのは、不安とか落胆だ。

 触れた瞬間に、俺の方を見て何かを確認して、ホッとしたりガッカリしたりしているのが分かった。白那の元気がない原因は、静馬ではなくて、俺みたいだ。

 そんな状態であっても約束をすれば昼休みに学校に来てくれる。けれど、そうすると白那はいつもそわそわと辺りを気にしているのだ。

「いないよ」と俺が言うと、
「誰のこと?」と白那は言う。

 けれど、明らかに静馬の影を気にしているのが分かった。静馬が白那と何を話して、何をしたのかは非常に気になる。

 昼休みの約束を断られる日は、白那は静馬に会っているのだと思う。そういう日には、必ずサロン帰りの白那の周りには黒い粉が浮かんでいるのだ。

 その黒い粉はなんだよ?と思う。
 力を収めるはずなのに、何で黒い粉があるんだよ、と。

 真正面から聞いても答えてくれないなら、例えば、強引に聞きだしてみることも出来るかもしれない。一緒に住んでいるし、白那の意思とか自分の本音を無視すれば、割と簡単に力づくで事を運べる。

 でもそんなことをしても、その先には、きっとむなしさしかない。
 心の面だけは動かせないのが分かっているから、白那の行動を制限しても意味がないと知っている。
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