カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
カエル化姫と好きな人

新しい仕事

「水樹さん、少しだけ仕事を手伝ってくれませんか?」
 大学で待ち合わせして会った日、日埜静馬は出会いがしらにそう言った。

「水樹家の話を聞かせてくれるっていう話ですよね?」と私が言えば、
「実践してみれば、一番分かりやすいですよ」
 と静馬は言うのだ。

 静馬に連れていかれたのは、古民家風の施術サロンだ。静馬の家族が運営しているらしい。

 静馬もまた、多少の施術技術があるようで、ときどき手伝いに来ていることがあるようだ。このサロンには、業界人がよく出入りしているとのことだった。 

 その日は政治関係者の男性が施術に来ていたようで、静馬は、私に、「施術をしてみてくれませんか」と言ってくる。

 躊躇していたら、「もちろん施術料は水樹さんが受けとれます」と言われ、さらに、「水樹さんの力は社会に役立てるべき力です」と畳みかけられてしぶしぶと施術する。

 その日施術をした男性は、黒いもやが全身を覆ってしまっていた。サロンで見かける人どころではない。多分、これは私の施術でどうにかなるレベルではないと思う。

 何か持病があるはずだ、と思った。それを静馬に伝えるけれど、水樹家の力ならどうにかなります、と言われる。
 ママから聞いていた話によれば、私たちの力は身体の不調の一時的な緩和が出来るし、気持ちを軽くすることは出来る。ただ、病を完治させる力はないのだ。
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