カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
 しばらくしたら玄関のチャイムが鳴って、出れば瑠璃也がいた。ラフなパーカーを羽織っただけの、セットアップスタイルで、部屋着だと分かる。

「しつこいよ、何しに来たの」
 まだ家を出て1日も経っていないのに、過保護だと思う。

「遊びに来た」
 と言って瑠璃也はズカズカと入って来る。廊下を真っすぐには進まずに、私の部屋へと向かう。
 ちょっと待って、と言うけれど、聞き入れられずに、推し活グッズであふれかえった部屋に瑠璃也は入っていく。

 惨憺たる有様の部屋を見て、瑠璃也は温度の低い声で言う。
「浮気ってこれ?」私は首を横に振る。
「これは、かつての推しメンたち、だね」と言うしかない。

 瑠璃也を自分の部屋に入れたことはなかったし、グッズを瑠璃也に見られたことはなかった。クローゼットの戸も開いていたので、かつての参戦服や私自身の装備も丸見えになっている。

 推しの好みに合わせた服装を着ていく、推しのメンバーカラーの服を着ていくなどなど、推し活を満喫していた名残だ。

 瑠璃也は何も言わずに、推し活の残骸を眺めている。コメントがない分だけ、無言の圧力があるようで、ものすごく気まずかった。
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