カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~

婚約者はど天然

 数か月ぶりに帰った自宅の部屋は、少し埃っぽくて、まず掃除が必要になる。

 仕事終わりに掃除をしていたら、ママと過ごした毎日が思い出される瞬間があって、心がスッと寒くなる瞬間があった。私にはもう家族がいないんだ、と思う。

 しばらく部屋を片付けていたら、推し活グッズが山のように出てきて、うんざりする。アイドルやバンド、スポーツ関係。うちわやペンライトからパンフレットにタオル、ユニフォームなどなどが大量に出てくる。

 瑠璃也の家に住むようになってから、推し活はしていなかった。
 瑠璃也以上に好みの顔はないから、推し活する必要がなかったのだ。

 瑠璃也の顔はドンピシャで好きだけれど、一緒にいると幻想を抱かせてはくれない。瑠璃也はいつも感情を乱すことをしてくるからだ。
 かといって、気になってしまうから、担降りして新しい推しメンを探すのも難しい。


 私はそれぞれのオタ友に連絡して、グッズの引き取り手を探す。片付けの休憩中にスマホを見れば、瑠璃也から連絡が来ている。

「傷つけたならごめん、話せないかな?」
 と言って来ていたけれど、話したいと思えなかったので、「今は無理」とだけ送っておく。このやりとりが何回も続いて、

「じゃあ、いつならいい?」と言われた。大概しつこい。
 面倒くさくなって「一生無理」と送ったらその後、瑠璃也は沈黙する。
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