カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
「……でも。こっちなら、できるよ」

 白那がボトムスのホックに触って来るのを見て、これは罠だ、と思う。白那が俺を嫌うのに十分な証拠を与えてしまうから。

 分かっているけれど、このまま白那を放置することはできなかった。そして、自分の感情を誤魔化すこともできなかったのだ。

 白那をちゃんと大切にしてくれるなら、白那の相手は誰でもいい、と思っている。
 推しメンでも、誰でも、白那が笑っているなら、それでいい。
 でも、その誰かが白那を大切にしないなら。

 奪って――――俺が大切にする。

 そうして、脳天をぶち抜かれた俺は、人生で最大の失敗を犯した。
「本当にそうかどうか、試してやるよ」
 怒りは欲情へと安易に転化する。

 自分よりも高い白那の体温や、身体の匂いに酔う余裕なんてなく、とことん触れつくして忌まわしい存在を全部消してやろう、と思う。

「瑠璃也」
 と眉根を寄せる白那は、彼女が謝ったような状態じゃなかった。甘く柔らかな身体は、リラックスしているように見える。
 だとしても、俺は白那を傷つけているのはたしかだ。

 半ばやけで自分を奮い立たせて最後まで達したとき、ああ――――これで本当に、完膚なきまでに白那に嫌われるのだろう、と思った。
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