カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
 私がじっと見つめていると、瑠璃也はソファの隣に腰をおろす。けれど、距離感はしっかりと1m弱とっていた。距離を取ってもらうことは、私が求めていたことだけれど、なぜか少し寂しく感じる。

「距離、ちゃんと取るんだね」と私が言うと、瑠璃也は目を丸くする。
「白那は近いの、嫌じゃなかったっけ?」
「え、そうだけど」

 私が言うと、瑠璃也と目が合う。
 お互いに見つめ合うのだけれど、微妙な距離感があるせいか、初対面かのようなぎこちない空気感になる。瑠璃也が口火を切った。

「じゃあ、近づいていい?」
 と言う。

 下から見上げるようにして言うので、上目遣いにドキッとした。なんだろう、やっぱりおかしい。嫌だと言ったって、これまでは距離と詰めてきたじゃないか、と言いたくなる。
「いいけど」
「大丈夫、グイグイはいかないよ」
 と言って身体を寄せてくる。瑠璃也が来るとココナッツの香りが香るけれど、これもまた一つの謎だ。

 瑠璃也のセーターの袖が私の腕に触れ、ドキドキしてしまう。
「白那?顔赤いよ」
「瑠璃也がいつもと違うから、どうしていいか分からない」
「ごめん、白那は俺の顔が好きなだけだし。勘違いして距離詰めたら嫌われるって分かってるけど」

 顔が好きなだけ、そう本人に言われてしまうと、罪悪感が生まれる。私自身がさんざん瑠璃也にぶつけていた言葉なのに。

「嫌いになるとか、以前に。今の瑠璃也は別人みたい。なんか、私、とてもひどいこと言ったような気がしてる」 私が言うと、瑠璃也は笑う。
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