カエル化姫は愛されたい、偽俺様王子は愛したい~推し活女子と天然一途男子は最強夫婦~
 その後、朱那さんから連絡が来たとき、俺は謝る準備をしていた。大切な娘さんを傷つけて、云々、と言い訳じみた言葉を考えていた。

 けれど、朱那さんから伝えられたのは、予想外の相談だったので、驚く。
 サロンの空き時間に行き、朱那さんはカウンセリングルームでハーブティを出してくれる。

 そして、
「単刀直入に言うね。瑠璃也くんにお願いがあるの。何があっても、今後白那を絶対に離さないで欲しいの」と言う。
「それ、どういう意味ですか?」
「瑠璃也くんが婚約してくれて良かったと思う。どんな経緯であっても、どんな意図だとしても、婚約という形をとるからには、白那のそばにいてくれるということだよね」
「でも、白那からは、婚約破棄を迫られると思います。それだけのこと、俺はしたと思うから」

「白那のこと好き?」
 朱那さんは真っすぐにこちらを見つめてきて、聞いてくる。俺は頷いた。

「絶望的な片思いですけど、好きです」
 今までこんな経験はないから、なぜ白那だったのか分からない。
 出会った日から白那のことが頭から離れないのはたしかで、白那に会えた瞬間に胸がときめくのはたしかだ。
 そして、白那を傷つける存在があれば、排除したいとすら思う。

「嫌われてるって思っても、かなりしつこく粘ってるから……」
「瑠璃也くんは白那好きレベルは、かなり高い好きってことね。ま、私には叶わないけど」と朱那さんは笑う。

「白那は、素直に言わないけど。婚約の話が出てきたとき少し嬉しそうだったよ。この前からまた落ち込みモードになってるけどね。私は、瑠璃也くんとの婚約の話が出てきたとき、瑠璃也くんが白那を連れ出してくれればいい、と思った」
 朱那さんはしんみりと言った。
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