片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして



 シャワーを済ませた私を誠は真顔で見た。

「かっーー」

「か?」

「い、いや、何でもない」

 何かを言い掛け押し止める様子に、やはり化粧は落とすべきじゃなかったと反省する。

 お風呂に入ったのに改めてメイクしたら、1人で良からぬ期待をしていると勘違いされそうで。
 前髪をいじり素顔を出来るだけ隠す。借りたシャツは大きく、肩が落ちてしまう。

 誠はまた黙る。部屋に入った時、彼は難しい顔でベッドを眺めていた。酔いが引き、この状況に冷静になったのかもしれない。

「……俺も入って来ようかな。あぁ、冷蔵庫にあるプリンを食べて待ってて」

「帰らなくていいの?」

「え? なんで? 帰りたい?」

「誠、酔ってるみたいだったし。私がお風呂に入ってる間に酔いが覚めて、考え直したのかなぁと」

「俺、酔ってないよ」

 私の探る風な言い回しに誠は少し怒ったみたいだった。

「どのくらい飲んだかも覚えてる。茜はカシスソーダとプレリュードフィズを飲んでたよね?」

「う、うん」
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