しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~

「被害届は提出しなかったはずでしょう?」
「響さんがマンションの管理会社に被害届を提出するよう根回ししたんだよ。被害者が四季杜に縁のある女性とわかれば、警察も真面目に捜査するさ」

 律はあえて業務連絡のように淡々と説明した。

「逮捕されたのは、二十代の男性二人組。SNSで割りのいいアルバイトがあると、誘われたらしい。依頼人は部屋を荒らした写真を送ると、報酬を倍にしてくれたそうだ。随分と景気のいい話だよな?」

 衣都に個人的な恨みがあり、金には困っていない。足がつかないようにSNSで人を募るくらいだ。手慣れているのか、かなり頭がいい。
 人物像はかなり絞られてくる。

「それから、響さんから頼まれて、例の教え子の母親の交友関係も調べた。半年ほど前から尾鷹紬が主催するサロンに頻繁に足を運んでいたようだ」

 律は黒幕は尾鷹紬に違いないと暗に示してた。
 一連の出来事の関連性を指摘され、衣都の表情が強張った。
 響の予想は最も最悪の形で当たったことになる。

「気をつけろよ。まだ何か仕掛けてくるつもりかもしれない」
「うん。心配してくれてありがとう、兄さん」

 衣都には律の忠告の意味が手に取るように分かった。
 まだ事件は終わっていないのだ。むしろ、今からが本番なのかもしれない。
 
(私達、本当に無事に結婚できるのかしら……)

 すべてが順調に回り始めているというのに、どうあっても不安が拭えなかった。
 今はただ、梅見の会を無事に終えられることを祈るばかりだった。

< 130 / 157 >

この作品をシェア

pagetop