しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
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梅見の会の当日。
天気は清々しいほどの晴れになった。
週の頭に降り積もった二センチほどの雪もすっかり溶けてなくなり、早咲きの梅の花が嬉しそうに凛と空を見据えていた。
「すごい数の梅の木……」
衣都と響は準備のため、早朝から現地入りした。
数十年ぶりに旧四季杜邸を訪れた衣都は、立ち並ぶ数百本の梅の木に圧倒されていた。
職人の手によって日頃から丹念に手入れされている梅園は、ちょうど見頃を迎えていた。
夜露で濡れ、朝日で光る梅の花。
桜のような華やかさはなくとも、控えめで愛らしい梅の花は素朴で慎ましく感じられた。
梅見の会が開催される旧四季杜邸は大正時代に建築された、鉄筋コンクリート造りの洋館だ。
その設計には本場で学んだ建築家が携わり、当時では珍しいヨーロッパの上級階級を思わせる邸宅は、華やかで品があり、数十年が経った今でも多くの人に愛されている。
たびたび歴史の表舞台にも登場し、政府要人との会合や、海外からの賓客のもてなしに使用された。
四季杜家は大戦を機に、住まいを現在の場所に移したため、都心の一角にある広大な敷地と屋敷は現在、結婚式や会食などの用途で一般に貸し出されている。
ただし、旧四季杜邸を借りられるのは、社交界でも品格と功績が認められた一部の人間だけであった。