しきたり婚!~初めてを捧げて身を引くはずが、腹黒紳士な御曹司の溺愛計画に気づけば堕ちていたようです~
本音を言うのであれば、今すぐ自分も衣都を探しに行きたい。しかし、響が長時間いなくなったら、秋雪に異常を察知されてしまう。
響は身を切られるような思いで大広間に戻った。
ゲストと談笑する頭の片隅で、自由にならない身の上をひたすら恨む。
(どうか無事でいてくれ……)
衣都が見た目通りのただ大人しい女性だったら、こんなに夢中になったりしない。
あの日、怒りをすべてピアノにぶつけていたように、身の内に激しいものを持っていると知っているからこそ、無茶をしないか心配でたまらないのだ。
「響さん」
衣都を探しに行っていた律が、そっと響に呼びかける。険しい表情からして、いい知らせではなさそうだ。
律は人目を憚るように、耳打ちをした。
「……本当か?」
律が持ってきたのは、衣都ではなく綾子を発見したという報告だった。