可憐なオオカミくん
太陽が去り、空を暗闇が支配する。大自然の中で見上げる夜空は、星がきらりと光って見えた。
大自然の中で見るからか。友達と一緒に見るからなのか。
いつも街中で見上げる星空の何倍も輝いて見えた。
辺りが暗い中、キャンプファイヤーの会場に移動する。
穂乃果ちゃんと足を運んだ頃には、大勢の生徒が集まり、歓声や笑い声が飛び交っていた。
点火はまだだったが、点火台の周りには、ランタンが置かれて、淡い灯りに包まれ神秘的な空間が広がっていた。
「一華! 早めに葵を捕まえた方がいいよ?」
「つ、捕まえる?」
「だってさ、キャンプファイヤーだよ? 夜空だよ? ランタンに囲まれた、この良さげな雰囲気だよ? みんな待ち望んでいるのは何だと思う?」
「……みんなで踊るとか?」
「ちがーう! 告白タイムでしょ! 非日常な空間で、みんなハイテンションになってるんだから。これから続々告白したり。されたり。していくよ?」
「葵くんもされるのかな?」
「されるね! 確実に」
穂乃果ちゃんは胸を張って言い切った。
そうだよね。葵くんはモテるって言ってたし。
「他の女に捕まる前に葵を捕まえないと!」
「え、でも……」
「まあ、葵が告白されてもOKするとは思えないけどさ。他の女に『好きです♡』なんて葵が言われているところ想像してみ?」
穂乃果ちゃんに言われた通り、頭の中で妄想を繰り広げる。
胸が苦しい。ズキズキと痛い。
「いやだ! 穂乃果ちゃん。わたし、いやだ!」
「うん。うん。一緒に葵を探そう?」
点火台に火は点けられていない。辺りを照らすのはランタンの淡い灯りのみだ。
そして、みんなの服装は同じ。
紺色の運動着をきてる人が集まっているのだ。そんな中で葵くんを見つけるのは至難の業だ。
そう思っていた。
だけど。わたしにはすぐに見つけられた。
だって、誰よりもかっこよくて、光って見えた。
恋をすると、好きな人を見つけることが出来るんだ。
「葵くん!」
張り上げた声が届いた彼は、目を見開いて振り向いた。わたしは葵くんの元へ駆け足で走った。