つぐむちゃん、口を開けて。



 ――今までだって、何度か千鶴(ちづる)くんに伝えようとしたことはあった。




「つぐむちゃん、今日もかわい」

「……っん、む、ぅ」

「もうちょっとちゅーさせてね」



 幼なじみで恋人の千鶴くん。

 高校生になってから少し明るくなった髪色に、耳に開いたピアスホール。

 元々のかっこよさから、さらに磨きがかかったその姿に振り向かない人なんていない。

 誰もが憧れる王子様と昔から一緒にいたというだけで近くにいられるわたしは、少しずるくて贅沢者なのだろう。



「ふぁ、は、ぁ……」

「ん、頑張ったね。よくできました」



 ゆっくり唇が離れた後、わたしを落ち着けるようにぽんぽん、と頭が撫でられる。

 わたしを見る千鶴くんの瞳はいつだってまっすぐだ。

 まっすぐ、わたしに好意が伝わるように振る舞ってくれている。


 ……わたしとは、違って。


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