クセのある御曹司を助けたら「運命だ」とか言われました。
お父さんが気に入って購入してしまった気持ちがものすごく分かる。
「わ、私だったら手放したくないなあ……」
こんなお城みたいな家はそんなにない。手放すことを惜しく思ってしまう。
「でも、ここに来るまでに片道2時間かかるよ? 不便すぎる。かといって、この別荘のためだけに俺の会社を移転させるわけにもいかないし、この別荘、税金も固定資産税もめちゃめちゃかかるしさ。それより俺は、穂香と一緒に新しい家を建てたいかも」
「…………へ?」
「まあ、予定は未定。だけど予定」
『なんちゃって』と笑う澄人さん。自惚れて、真に受けてしまいそうになる。澄人さんは今日一日、私の恋人でいてくれているからこんなことを言ってくれているんだ。
勘違いしちゃいけない。
真に受けちゃいけない。
それにこの人は御曹司だ。ずっと疑問だったことをこの期に及に交えて聞いてみた。
「澄人さんはその、奥さんになられる方は決まっていないんですか? 許嫁とか……」
私の質問にピクリと眉を動かした澄人さん。なにかありそうだ。
「いや、えっと……御曹司って許嫁がいたりするイメージがあるのでどうかな、と」
澄人さんは「許嫁ねー」と言いながら食事の手を止めた。