双子アイドルは俺様暴走族!
晴は「好きにしろ」とだけ言い、視線を伏せた。
圭は嬉しそうにその場を走り去る。
あぁそうか……。

あたしたちには見えない試合を、晴と圭はしていたのだ。
そして晴はそれに負けてしまった。
だからこんなにも落ち込んでいるんだ。

「ねぇ、晴」
あたしは教室へと続く渡り廊下で立ち止まり、前を行く晴を呼びとめた。
チームのメンバーたちも先に戻ってしまって、ここには今誰もいない。

「なんだよ」
晴はけだるそうに振り向いた。
フワフワの髪が汗で頬に張り付き、沈んできた太陽の陽によってダイヤモンドみたいに綺麗に輝いていた。

あたしは一歩前で進み、晴の髪の毛につくダイヤモンドにそっと指先をふれた。
そのダイヤはジトッとしめっていて、まるであたしが頭から水をかけられたのと同じような状態で、あたしは少しおかしくなった。
「あたし、試合を見る前にトイレで水をかけられたの」

「はぁ?」
晴は驚きと疑問とがごちゃ混ぜになった声を上げる。
「これからも、晴や圭と一緒にいたらきっとイジメられえるんだろうね」
あたしはそう言いハニカムように笑った。
< 306 / 340 >

この作品をシェア

pagetop