双子アイドルは俺様暴走族!
「ユズちゃん、このBlu-ray買ったの!?」
驚いて、思わず大きな声を出してしまう。
「そうよ。歌が聞こえないから黙っていて」

ユズちゃんは画面から視線を外さずにあたしに向かってそう言った。
Blu-rayなんて繰り返し何度でも見ることができるのに、そこまでして観たいなんて……。

あたしはユズちゃんの心理が理解できず、首を傾げて画面を見つめた。
たしかにカッコいいとは思うけれど、その笑顔が嘘くさいというか。
いかにも作っていますという感じで、あたしは見ていてだんだんと胸やけがしてくる。

ショッピングモールで見た2人はもっとこう、人間らしかった。
口も悪いし態度もでかい。
ニッコリ笑うと王子様だけれど、それで女の子たちが何も言えなくなることをあの2人はきっと理解している。

「ユズちゃんって2人のファンなの?」
一旦歌が終わったところで、あたしはそう聞いた。
「そうよ。デビューした時から好きなの」

そう返事をするユズちゃんは頬を紅潮させて、目をキラキラと輝かせている。
まるで本物の恋する乙女みたいだ。
ユズちゃん、恋とは実際に手の届く人とするものであって、テレビの中の人とするものじゃないと思うよ。
< 47 / 340 >

この作品をシェア

pagetop