君は運命の人〜キスから始まったあの日の夜〜
それにしても……お味噌汁に卵焼きに焼き魚、加えてフルーツまでって、朝から栄養バランスが摂れた食事だな。自分はコーヒーだけで済ますのに、わざわざ起きて朝ごはんを作ってくれるなんて。……隼人って、意外に世話好き? 今までの彼からは、想像もつかなかった。
目が合うと、魅力的な笑みを向けられ、ドキッとする。
さっきは素っ気ない挨拶だったのに、なんだか調子が狂うな……
無口で冷たい。でも逆にそこがいい。あの時は、女性社員達が言うことが分からなかったけど、今なら、分かるかも……
「体は平気か?」
「体?」
「昨日……」
あっ……
「少し激しかったかと思って」
ストレートにそう言われ、一気に顔が真っ赤になった。
「そ、そんなハッキリ言わなくても……」
「今更、照れることないだろ。恋人同士なんだから」
「は、隼人はそうでも、私は慣れてないんだから!」
「へえー、そうかよ」
経験値っていうものがあるでしょうが。隼人と私じゃ、天と地の差があるんだから。
分かってはいたけど、隼人は手慣れていた。触る手も宝物を扱うかのように優しくて、私がいいと思うところを的確に当ててきた。
聞くまでもない。葉月ちゃんだって言っていた。有名な女優やモデルとも付き合っていたって……
「__おい」
いつもの低く凛とした声が、太くのしかかるような声をしていた。顔を上げると、いつになく真剣な顔をした隼人が、真っ直ぐに私を見ていた。
「余計なことを考えるな。俺が愛しているのは、今も昔も君ただ一人だ」
胸が、ぎゅーっと締め付けられるような苦しさがあった。でも、嫌じゃなかった。これが、人を愛して感じることの出来るものだと分かっていたから。
「……うんっ」
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