君は運命の人〜キスから始まったあの日の夜〜

二人の絆

真っ白な天井が視界に入る。目が覚めると、そこはいつもの家ではなかった。
確か、昨日は会社を出て、隼人の家に来て……それで……
「__!」
出来事を思い出して、勢いよく上体を起こす。
「っううう……」
腰の痛みを感じ、思わず背中を丸くする。
そうだ、昨日は隼人と……したんだ……。
隣を見ると、隼人の姿はなかった。
もう起きたのかな。
ゆっくりと体を動かし部屋を出ると、リビングの方からお味噌汁のいい香りがした。香りにつられてリビングの扉を開くと、キッチンに隼人の姿があった。部屋着姿にエプロンをしている。いつも綺麗にまとめられた前髪は、今日は下ろしていて、少し幼く見える。
そっか、今日は土曜日。会社も休みだ。
「お、おはよう」
ぎこちなくも、後ろから声をかける。隼人は私を見ると、いつもの調子で「おはよう」と返してくる。少しそっけない感じもするけど、これが彼だと知っている。
「朝ごはん、作ったから食べろよ」
「うん」
ダイニングテーブルに移動し腰を下ろすと、隼人が手際良く器を並べていく。その様子を見て、なんでも出来る人なんだなとつくつぐ思う。
料理まで出来ちゃうなんて、出来ないことを見つける方が大変そう。
「……あれ、隼人は食べないの?」
正面に座った隼人の前には、カップが一つ置かれていただけだった。
「朝はコーヒーしか飲まない」
「そうなの? でも、それじゃお腹空かない?」
私がそう言うと、隼人は「フッ」と面白そうに口の端を持ち上げた。
「お前じゃないんだから」
「なっ……私、そんな大食いじゃないし」
私がツンとした言い方をしても、隼人は笑っていた。関係性が変わっても、私をからかうことはやめてくれないらしい。
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