君は運命の人〜キスから始まったあの日の夜〜
許すことを、学ぶべき……
お父さんが、お母さんに会いに来たというのは事実。
ちらっと、お父さんの顔を見ると、お父さんは、深く思いつめたような顔をしていた。
「椿」
隼人が私の手をそっと握る。
「お父さんをお母さんに会わせてあげよう。椿だって、ずっとそうしてほしかっただろ?」
隼人の言う通りだ。私はずっとお父さんに、お母さんに会いに来てほしかった。矛盾してしまう気持ちを抱えながらも、いつか会ってはくれないかと期待していた。
だって……お母さんが愛しているのは、やっぱり……お父さんだから……
私は知ってる。お母さんの携帯の待ち受けが、今もお父さんと撮った写真であることを、今も、お父さんと交わしたメールを消せないでいることも。
私はゆっくりと頷いた。
「だけど、もしまた、お母さんを傷つけるようなことをしたら、絶対に許さないからっ……」
私が鋭い瞳でそう言うと、お父さんはその言葉を深く胸に留めるように重々に頷いた。
ドアの前から退ける。
躊躇しているのだろうか。お父さんはドアに手をかけようとして、手を下げる。
そして、落ち着かせるように一息つくと、ドアを開けた。
いきなり現れたお父さんに、お母さんは驚きのあまり声も出せていなかったけど、その表情は、この二年で見た中で、一番幸せそうだった。
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