君は運命の人〜キスから始まったあの日の夜〜
シャンパンの味を堪能していると、会場内が一気に騒がしくなった。
あっ……
そこには、タキシードに身を包んだ隼人がいた。隼人は慣れた様子でマスコミに対応し、ゲスト達に挨拶をしている。
「やっぱりかっこいいいですね。うちの御曹司様は」
少し酔ってきているのか、甘ったるい声で葉月ちゃんが言う。
隼人が来ると、我先にと、ゲスト達は隼人の元へ行き、そこにはあっという間に人だかりができる。男性達は一気に闘争心をむき出し、挨拶を済ませるなり、ビジネスの話に持ち込もうとする。一方の女性達は、妖麗な笑みを浮かべ、隼人の気を引こうとしているが、隼人は上手くかわしているようだった。
改めて、隼人って、すごい人なんだな……。あんな人が自分を抱きしめていたなんて、夢でも見ていたんじゃないかって感じ。
すると、会場内の雰囲気が一変した。今度は誰が来たのかと入り口付近を見ると、そこにはスーツ姿のダンディーな男性がいた。年齢は五十代半ばくらいだろうか。なんだか、雰囲気が隼人に似ている気が……
隣にいるメガネをかけた人は秘書なのか、男性から上着を預かりスタッフに渡していた。二人は会場の中心にいる隼人の元へ向かう。
「ありゃ、あれって……副社長のお父様ですかね……」
「えっ!!」
あの人が隼人のお父様で、宝月ホールディングスの会長……!
確かに、二人は親しそうに隣に並んでゲスト達と話している。
「って……葉月ちゃん、それ何杯目!?」
見ていないうちに一体どれくらい飲んだのか、ウェイターからシャンパンを貰う葉月ちゃんの頬は、熱を帯びたように火照っていた。
「らいじょぶらすってー」
全然、呂律が回ってない……!
慌てて葉月ちゃんからグラスを取り上げる。
「葉月ちゃん、どこかで休ませてもらおうよ」
「だからー、らいょうぶって、いってるらないですかー」
「大丈夫じゃないって」
グラスをウェイターに渡すと、葉月ちゃんの肩を抱き、騒がしい会場内を出る。
デッキに行って風に……と思ったけど、今の季節のデッキは寒いだろうし……
困っていると、トントンっと後ろから肩を叩かれた。振り向くと、そこには見知らぬ若い男性二人がいた。
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