語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい

なにはともあれプロポーズ


 そうこれは、私の最初で最後の恋の記録だ。
 温度高めで、暑苦しい、そんなガチ恋の記録。

「私と、やりまくってから死んでよ」
 それが私の血まみれのプロポーズだった。相手の男は、目を見開いてはあ?と言う。

 二つ年下のその男は、その日高校の卒業式だった。学校に迎えに行ったら、制服のボタンをことごとく奪われていたのを見て、私はかなり焦る。

 気の強そうな見た目に相反する、程よい脱力感と低音の甘い声。
 同年代からすれば、抜け感のある余裕の垣間見える振る舞いに、モテるだろうなとは思った。けれど、まさかここまでとは、と思ったのだ。

「あのさ、オープンカーで迎えくんのやめて。で、露出ヤバい服装も、噂になりすぎる」
 周りにいるご父兄はセレモニースーツを着ているのはたしかだし、校門に横付けした車は即移動せよ、と言う眼差しを受けている。

 ただ、私はご父兄でもなければ、路駐に無自覚なわけじゃない。サッサと動かすつもりだ。露出がヤバいとは言っても、少しばかりボディライアンが出るノースリーブワンピースを着ているだけだった。

 無遠慮に守りに入ったことを言われて、カチンと来てしまうのだった。

 でも、その男・木瀬翡翠(きせ ひすい)が、私の顔を一瞬伺ってから、
「はい、これ」
 と第二ボタンを渡してくれたので、それだけで、きゅんに上書きされた。
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