語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい
「日埜くんはイケメンだし、モテててるし、相手に不自由しないんだろうなって思います。でも、私は日埜くんとはまず、やりまくりませんよ」
「水樹さんはお安くないと。高値の花みたいな感じですか?」

「そうじゃなくて、日埜くんとは無理」
 と言ったとたんに、明らかに藤馬の空気が変わって身構えた。けれど、一歩動き出すが遅れたので、バトルならば、先手を取られて私はやられている。

 バトルじゃないので、身体を寄せて抱きしめられた。するすると寒気がのぼってきて、バチバチと身体に痛みが走る。
 痛っ、と声をあげたら藤馬も驚いた顔をしていた。

「すみません」
 となんだか分からないだろうに、藤馬は丁寧に謝って来るのだ。
「ほらね。水樹家に生まれたってだけで、すごく護られている」
 結界のようなものだ、と思った。

「触れると、痛いですか?」と藤馬は聞いてきたので、私は頷いた。
「だからね、無理なんです」
 と言う。
 でも藤馬は納得していないのが分かる。

「繰りかえしていけば、慣らせるかもしれませんよ」
 と言って。
 なんかいい方がいやらしいな、と思う。私はこの日から藤馬への意識を変えていた。
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