語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい

無理の証明

 日埜藤馬は顔が好みじゃなったけれど、顔が好みでちょっと惜しい男の子はいた。クラスメイトの峰時真(みね ときま)だ。

 少し釣り目がちで目力が強く、シャープな顔つきをしている。
 言ってみれば、キツめの顔で好みだったけれど、もう一味足りない。
 時真が表情豊かな女の子と結婚してくれて、子どもが生まれでもしたら、その子はドンピシャの好みになりそうだ。

 といっても、仮に顔だけ好みの子が出てきても、そんな年下と殴り合いなんて、そのときは私の方が無理だな、と思った。
 時真はそもそも過度なアクセサリーじゃらりとつけているところと、女の子を端から自宅に呼んでは、ここぞとばかりにものにしていく感じが好きになれそうにない。

 うちの学校は、それなりに裕福な人たちや学力が高い人たちが集まっているのは確かだけれど、自ら「お金持ちでーす、ウェーイ」とアピールしている感じがあまり好きじゃない。

 一度、
「水樹も来れば?」と声をかけられたことはある。
「殴り合って峰が勝ったらね」と答えたら、「うはぁ、アドレナリン系女子は無理」と退散していった。

 これまでは好きだったら顔がどうだって気にならないし、きっと、愛着だって湧いてくるという感覚で生きていた。
 中等部の頃に好きになった子に関しては顔がどうとか考えたことはない。けれど、水樹家の話をグランマから聞いてからは、顔で判断する人間になってしまった。
 水樹家の云われは恐ろしい。
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