語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい
 私の言葉に、翡翠の表情が固まるのが分かった。
 ああ、こうやって幻滅されていくんだな、と思う。

 これまで無理だった話をしていこうかと思ったところで、
「分かった。朱那の言葉のチョイスがバカなのは分かった。でも頼むから、それ以上言うな」
 翡翠が急にそう言い、止めた。

 そしたら、
「おつかれ~」と藍がやって来る。

 翡翠がああ、と軽く言い、「仲いいね、二人とも」と藍は軽く返すけれど、どうやら聞かれていたらしい。

「翡翠、こんなカワイイ子に熱烈アプローチされてるのに、乗らないのもったいない」と冷やかしの声をかけて、去っていくのだった。
「カワイイ子」
 と私はパワーワードをもらって満足してしまう。
「カワイイ子だって」
「どこが」

「言うと思った。どーせ、翡翠の好みじゃないよ」
 翡翠の友達に探りを入れた限り、翡翠の好みはセクシーで大人っぽい女性のようだ。色気ゼロの私とは真逆だというのは分かっている。

 そう言ったら翡翠がもの言いたげに視線を送って来るのが分かったから、

「私と結ばれてくれればいいのに」
 本日最後の攻撃を仕掛けておく。
「ないな」
 即座にそう言われて、撃沈する。

 そうしていたらお客様が来たので、私は応対に入った。
 こうして、何戦して何敗しているのか数えるのも忘れるほど、フラれているのだ。
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