語彙力ゼロなアドレナリン女子は、ダウナーなイケボ男子をおとしたい

ノーをつきつけたい

 そっちの方とは日埜藤馬だ。
 私は高校時代の藤馬のことを思い出していた。

 藤馬とは幼稚園、初等部から高校までずっと一緒。決して仲が良かったわけじゃないけれど、いずれ結婚させられる相手として聞かされていたから、私はずっと精査していた。
 彼と結婚、果たして可能か?と。

 藤馬は色素の薄い整った顔立ちの、優しい物腰の男の子だ。幼稚園や初等部では、大人しめの可愛い男の子、という印象だったけれど、中等部に上がったとたんに、華麗なる変身をとげて、女子からの人気が急に高くなっていた。

 スポーツもソツなくこなす、学力も抜群に高い、そして業界御用達の家柄となれば、バックボーンの強さが効いている。その上、女子達が騒いでいるだけあって、かなりの美形の部類なんだと思う。

 ただ、残念なことに私の好みではない。私の好みはハッキリとしていて、気の強そうな顔立ちで、ややもすると殴り合いになるような野蛮さのあるメンタルの人だ。

 柔和で所作も丁寧、育ちの良さが身体の隅々まで、毛細血管の先まで行き渡っていそうな藤馬には、言い方は悪いけれど、これっぽっちも食指が動かない。
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