シテくれないわたしの彼氏~モンスターバトル~
「例えば、今とか」
 若槻が私の手を取る。

「今とか?」
 目が合い、
「ドキドキしてます」
 若槻はこちらを真っすぐに見つめながら言った。

「それって、興奮?刺激?」
「多分、刺激で。もっと接触が増えたら興奮になるかもです」
 私は手を繋いでみる。「あ」と若槻が声をあげた。

「刺激?」
「じゃっかん、興奮」
 若槻は言うけれど、顔色が変わることはない。

「見た目じゃ分からないね」
「ポーカーフェイスに見られがちなんです。でも、内心はけっこう」
「ね、キスって普通はどんなレベルの刺激?」
「じゃ、してくれます?」

 若槻が鼻先を近づけてくるので、私は首を横に振る。
「純情もてあそぶのやめてくださいよ」
「私だって純情だもん」
「そのわりには、エッチですよね。こういうの」
 繋いだ手をあげてみせるので、私は思わず離そうとする。けれど、若槻が離してくれない。

「ごめん、そんなつもりなかった。好奇心と実験とそんな感じで」
「いいっすよ、それで」
「どういう意味?」

「オレは多分、この先も大きく踏み外すことってしないと思うんです。今までもなかったし、これからもないと思います。面白くないくらい裏表もない感じなんで、見たまんま。実験されてるくらいがちょうどいいかもしれないっす」
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