シテくれないわたしの彼氏~モンスターバトル~
「なんで、成が村瀬さんに……?」
 彼だけは思案顔だ。

「友達申請があってKishii-naruってアカウントだったから、岸井さんに関係あると思って許可しちゃったの」
「そう」
 そのそっけない返事の中に、なぜか澱みを感じた。

「村瀬さん、信とも成とも距離を置くのがおすすめ」
「私もそう思う」

「お母さんとお父さんは、岸井さんに私がふさわしくないって思うってわけじゃないんですか?」

「そんな、滅相もない!もったいなすぎるくらい。薄暗いのが似合う信なんかじゃなくて、太陽が似合うような明るい人の方がいいんじゃないかって思うの」

 薄暗いっていうのはすごい表現だ。

「それに高校生を捕まえて、条件をつきだして試そうとしている大学生って、客観的に見て寒いって思うだけだよ。本当我が息子ながら、寒気がする」

「もし、ご両親がイヤじゃないなら、岸井さんと付き合いたいです。その、条件を達成するかどうかは、今決められないですけど」

「もちろん、それは構わないけど。もっといい人、紹介しなくていい?高校生は網羅してないけど、仕事の関係上大学生の知り合いは多いの」
 お母さんの誘いに、私は首を横に振る。

「村瀬さんのお父さんがシグナル保険の創始者だとは聞いていたけど。村瀬さん自身は、シグナル保険に入ってはいないの?心配だ」

「入っていないと思います。でも、大丈夫です、きっと」

 私がのん気に言うのを、ご両親は心配でたまらないという風に見ている。
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