公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
第一章 調査編

十歳の春に

 平凡な村娘だった私が公爵家の隠し子だと判明したのは、つい最近のことである。
 早逝した母の葬儀が終わり、悲しみに明け暮れる私の元に公爵家の使いを名乗る人がやって来て、その事実が伝えられたのだ。

 私が公爵家の人間であるということは、未だに信じられないことである。
 ただ、当の公爵が母と浮気していたことを打ち明け、その結果できたのが私だと言っているらしいので、それは間違いないことなのだろう。

 私は、ラーデイン公爵家で暮らすことになった。血筋の人間を保護するという名目で、私はここに連れて来られたのだ。
 しかし、隠し子という立場で公爵家に連れて来られるなんて、私にとっては恐怖でしかなかった。どう考えても、疎まれる存在でしかないからだ。

 それがどうしてこうなっているのか。私は自分の現状に対して、そのような感想を抱いていた。
 というのも実の所、私の公爵家での立場は想像していた通りのものではなかったのである。私は、もっと別の扱い方をされているのだ。

「あら? ルネリア、どうかしたの?」
「お腹でも痛いの?」
「いえ、大丈夫です。なんでもありません……」
「そうなの? それなら、いいのだけれど……」

 色々と考えて悩んでいる私を、二人の姉は心配してくれていた。
 その視線は、慈愛に満ちている。どうして、こんな視線を向けてくれるのだろうか。

「何か悩みでもあるなら、相談するんだぞ?」
「一人で抱え込んでいても、いいことなどはないからな……」
「うん、僕も何かあったら言った方がいいと思うな……」
「は、はい……」

 三人の兄も、お姉様達と同じように私を思ってくれている。どうして、ここまで気遣ってくれるのだろうか。

「ルネリア、遠慮はいらないのよ。私達は家族なのだから……」
「え、えっと……」

 さらには公爵の妻、つまりは義母も私にそのようなことを言ってくれる。
 それが、私にはわからない。浮気相手の子供に、一体どうしてそこまで言えるのだろうか。

 とにかく、公爵家の人達は私にとても優しかった。
 いびられたりする所か、私はとても丁重に扱われているのだ。
 それに、私はただただ困惑するばかりである。私がそんな風に扱われる理由が、まったく理解できない。

 隠し子である私に、そんな優しくできるものなのだろうか。簡単に兄弟として、家族として受け入れられるものなのだろうか。
 そんな思いが、私にある考えを思いつかせていた。もしかして、公爵家の人々には何か裏があるのではないかと。

「調べてみる価値は……あるのかも」

 私は、小さな声でゆっくりとそんなことを呟いた。
 こうして、私は公爵家の人々の実態を調べると決めたのである。
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