公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

謎の訪問者

 私は、客室にて人を待っていた。今日は、私に客人が来るからだ。
 ただ、実は私は今日来る人のことを知らない。客人があるとだけ伝えられて、誰が来るかは知らされていないのである。

「……一体、誰が来るんだろう?」

 私は、ずっと考えていた。今日は、一体誰が来るのだろうか。
 村長やケリー、村の人ならこんな説明はされないはずだ。ということは、私が直接会ったことがない人が来るということだろうか。
 しかし、家庭教師だとかそういう人なら、普通にそう言われるだろう。そう考えると、益々わからなくなってくる。

「……失礼します。お客様を連れて来ました」
「あ、はい。どうぞ、入ってください」

 そんなことを考えている内に、部屋の戸が叩かれた。
 どうやら、お客さんが来たようだ。私は、少々緊張しながら姿勢を整える。

「失礼いたします」
「え、えっと……」

 部屋の中に入って来た人物に、私は少し驚いていた。
 その人は、年老いた男性だったのだが、その顔に私は見覚えがあったからである。
 目の前の男性は、ダルギスに少し似ているのだ。つまり、彼の親戚ということだろうか。
 だが、彼の親戚が、どうして私に会いに来るのかがわからない。これは、どういうことなのだろうか。

「……ああ」
「え?」

 次の瞬間、目の前の男性はゆっくりと膝をついた。
 そして、その目からは涙が流れていく。客人は、私の顔を見て泣き始めてしまったのである。
 私は、訳がわからなくなっていた。本当に、この状況はどういうことなのだろうか。

「あの……大丈夫ですか?」
「あ……申し訳ありません」
「あ、いえ……」

 私が話しかけてみると、男性は謝ってきた。自分が取り乱してしまっていることは、自覚しているらしい。
 とりあえず、私は男性が落ち着くのを待つ。事情を話してもらわないことには、どうすることもできないからだ。

「取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。私は、ゼペックと申します」
「ゼペックさん、ですか?」
「はい」

 男性の名前を聞いても、私はピンとこなかった。
 聞いたことがない名前である。ダルギスさんに似ているものの顔も見たことはないし、彼と私との繋がりが見えて来てない。
 そんな私の悩んでいる態度に、ゼペックさんは優しい笑みを浮かべている。よくわからないが、彼が私に温かい感情を向けてくれているようだ。

「座ってもよろしいでしょうか?」
「え? あ、はい。どうぞ」
「ありがとうございます」

 私に許可を取ってから、ゼペックさんは対面に着席した。
 そういえば、彼は先程から私にとても丁寧な態度をしている。公爵家の令嬢を相手にしていると考えればそれは普通のことかもしれないが、その敬意にも少し違和感がある。
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