公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

気にしていたこと(アルーグ視点)

 俺は、ルネリアを挟んでカーティアと庭のベンチに座っていた。
 ルネリアが花壇の整備をしていたこともあって、こうして外で話すことになったのである。

「あの……お二人の話に、私が参加してもいいんですか?」
「別に構わない」
「ええ、まったく問題ないよ」
「そ、そうですか……」

 ルネリアは、少しだけ気まずそうにしていた。それは恐らく、俺達の邪魔をするかもしれないと思っていたのだろう。
 だが、別に問題があるという訳ではない。重要な話は後にすればいいだけだ。

「ルネリアちゃん、最近はどう?」
「どう?」
「毎日楽しい?」
「は、はい。楽しいですよ」

 カーティアの突然の質問に、ルネリアは戸惑いながらも答えた。
 聡い妹ではあるが、カーティアが何故そんな質問をしたのかはわからないだろう。
 しかし、事情を知っている俺にはわかる。彼女は、ずっとルネリアのことを気にしていたのだ。

「そっか……まあ、なんとなくはわかっていたけど、それなら良かったよ」
「はい……」

 カーティアは、出会った時のルネリアのことを知っている。彼女が悲しみと不安を抱えたことを知っているのだ。
 だから、彼女はルネリアのことを気にしていた。俺にも時々、近況を聞いていたくらいである。
 そんなカーティアは、花壇を整備するルネリアを見て話しかけられずにはいられなかったのだろう。その気持ちは、理解できる。

「カーティアさんの方は、どうなんですか?」
「え?」
「アルーグお兄様と上手くいっていますか?」
「おっと……」

 そこで、ルネリアはそんな質問をカーティアにした。
 純粋な彼女のことだ。それは単純に、自分が聞かれたから聞き返しただけだろう。
 だが、それは俺達にとって少々恥ずかしい質問だ。妹にそんなことを打ち明けるのは、心情的に少々気が引ける。

「まあ、上手くいっているかな? アルーグ様、そうですよね?」
「……ああ、そうだな」
「そうなんですね……それなら、良かったです」

 俺は、カーティアの言葉にゆっくりと頷いた。
 俺達は、貴族の婚約者として上手くいっている部類だ。いや、お互いに愛し合っているという関係から考えれば、上手くいきすぎているとさえいえるだろう。

「そういえば、お二人はもうすぐ結婚されるんですよね?」
「あ、ああ。そうだな」
「おめでたいことですよね……今言うべきなのかはわかりませんが、おめでとうございます」
「ありがとう、ルネリアちゃん……」

 ルネリアは、嬉しそうに俺達の結婚を祝ってくれた。それは少し気恥ずかしいが、嬉しい言葉である。
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