公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

暇を潰しながら

 私は、サガードに膝枕をしていた。
 彼は、私の膝の上で眠っている。そんな彼の寝顔を見ていると、なんだか心が落ち着いてきた。私も、少し眠くなってきたのだ。

「……でも、寝たら駄目だよね」

 しかし、ここで私が寝てしまったら大変である。寝返りで、この体勢が崩れたりしてしまったら、サガードが転げ落ちてしまう。
 ということで、私は気を引き締める。ただ、何もしていないとやはり眠気が襲ってくるので、何か気を紛らわすことをしなければならない。
 だが、ここから私は動くことができない。動ける範囲で、暇つぶしを見つけなければならないのだ。

「手元にはサガードしかない……」

 動ける範囲で見つかったのは、サガードだけだった。
 ただ、彼の顔を見ていると眠たくなるだけなので、これでは暇つぶしにならない。

「あ、そういえば……」

 そこで、私はあることを思い出した。
 そういえば、イルフェアお姉様やオルティナお姉様は、私の頭を撫でてくれていたのである。
 寝ぼけながら目覚める時、私はいつもそれを心地よく思っていた。こんな大事なことをどうして失念していたのだろうか。

「よし……」

 という訳で、私はサガードの頭を撫で始めた。
 すると、彼の表情が少し変わる。なんとなく、笑ってくれているような気がするのだ。

「意外と柔らかいんだね……」

 サガードの髪の触り心地は良かった。
 もっと固い印象だったのだが、意外とふわふわな毛並みだ。

「……うん?」
「あれ? ごめん、起こしちゃった?」

 そんなことを考えていると、サガードがゆっくりと目を覚ました。もしかして、頭の刺激で目覚めてしまったのだろうか。

「……何をしているんだ?」
「頭を撫でていたんだよ?」
「……何故?」
「何故……」

 目覚めてすぐに、サガードは私に質問してきた。
 その質問に、私は困った。何故撫でたのかといわれたら、それは暇つぶしだったからだ。
 ただ、それを素直に答えるというのはどうなのだろうか。流石に、まずいのではないだろうか。

「まあ、別にいいか……それより、重たいよな。そろそろ退くよ」
「あ、うん……」

 私が考えていると、サガードがゆっくりとその体を起こした。
 彼は肩を回して、体の調子を確かめている。その様子に、私は当初の目的を思い出す。

「サガード、少しは休めた?」
「ああ、おかげさまで大分楽になったよ」
「そっか、それなら良かった」

 サガードの言葉を聞いて、私は嬉しくなった。
 彼の疲れが少しでもとれたなら良かった。色々とあったが、当初の目的は達成できたようである。
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