公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

口を滑らせて

「そういえば、そもそも話だけど……サガードは、一体何に疲れていたの?」
「うん? ああ、そのことか……」

 サガードは、私の隣で目を擦っていた。
 寝起きであるため、まだ少しぼんやりとしているのだろう。その表情は、少し眠そうだ。

「父上や兄上と色々と話したんだ。これからのこととか、色々と……」
「これからのこと?」
「ああ、俺の婚約のことさ……色々とややこしくなるから、どうするかはしっかりと話しておかなければならない。キルクス兄上にそう言われたんだよ」
「婚約……?」

 サガードの言葉に、私は少し混乱していた。
 まず混乱したのは、婚約という言葉だ。そういうことが、サガードにもある。その事実はわかっていたはずなのだが、それでも怯んでしまったのだ。
 さらに、彼の言っていることがよくわからないのも、混乱の原因である。色々とややこしくなるとは、どういうことなのだろうか。

「……あ、いや、その、別になんでもないんだ」
「なんでもない?」

 そこで、サガードは目を見開いて首を横に振った。
 先程までとは違い、その表情からは眠気が感じ取れない。どうやら、ここに来て完全に目を覚ましたようである。

「今言ったことは、忘れてくれ。これは、まだ秘密のことなんだ……」
「秘密……サガード、誰かと婚約するの?」
「いや、まだ決まった訳じゃない。あ、違う。なんでもない」

 サガードは、私の質問に反射的に答えてしまったようだ。まずいと思っているのが、その表情から伝わってくる。
 しかし、彼の婚約というのは、私にとっても気になることだ。それが、友人としてなのかどうかは、自分でもわからないが。

「寝ぼけているんだな……余計なことばかり、言ってしまう」
「ねえ、サガード、ここまで言ったんだから、もういいんじゃない?」
「え?」
「そんな風に言われると、こっちも気になるよ。話してくれないかな?」
「いや、それは……」

 私は、サガードから話を聞き出そうとしていた。
 それは、彼にとって困ることだということはわかっている。だが、それでも知りたいのだ。
 私は、その好奇心を抑えられない。いつもなら、引き下がる所だが、今回はそういう訳にはいかないのである。

「誰と婚約する予定なの?」
「さ、流石にそれは言えない。言ったら、大変なことになる」
「大丈夫、誰にも言わないから。サガードは、私のことが信用できないの?」
「そういう問題じゃないんだ。ルネリアに言うのが、そもそも駄目なんだよ」
「私に言うのが駄目? どうして?」
「どうして? それは、その……王族としての都合というか、なんというか……」

 サガードは、頑なに打ち明けてくれなかった。
 その様子に、私は少し違和感を覚える。
 何かがおかしいような気がするのだ。この感覚は一体、なんなのだろうか。
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