公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

お兄様と一緒に(エルーズ視点)

 お父様との一件も終わり、僕は再び庭に出てきていた。
 木陰で休みながら、風に当たるのはやはり気持ちいい。これだけで、心が安らぐ。

「エルーズ」
「あれ? アルーグお兄様……」

 そんな僕の元に、アルーグお兄様がやって来た。
 お兄様は、ゆっくりと僕の横に腰を下ろす。恐らく、何か話したいことがあるのだろう。

「父上から、事の成り行きは聞いている。お前のおかげで、父上はある程度立ち直れたようだ。感謝する」
「……別に、僕はそこまで特別なことをした訳ではないよ。ただ、僕の素直な気持ちを伝えただけだから」
「それがありがたいのだ」

 アルーグお兄様は、僕にお礼を言ってきた。
 お父様のことで、お兄様がお礼を言う。ということは、事情をわかっていたということだ。
 それは、なんとなく察していたことである。きっと、お兄様はそのために僕を呼んだのだろう。

「お前を呼んで、本当に良かった。お前でなければ、この役目は果たせなかったはずだ」
「そうなのかな?」
「ああ……少なくとも、俺では無理だった。情けない話だが、俺は父上に優しい言葉をかけることなどできない。私怨はあるし、そういう立場でもないからな」
「……そうかもしれないね」

 お兄様の言葉に、僕はゆっくりと頷いた。
 確かに、お兄様ではお父様にそんなことは言えないだろう。
 多分、それはお兄様の役目ではないのだ。あくまでお兄様は厳しい立場であり、僕が優しい立場を取る。その役割分担が大切なのではないだろうか。

「お兄様も、色々と大変なんだよね……」
「……どうしたんだ? 急に?」
「立場とか、私怨とか、色々あって雁字搦めになって……大変なんじゃないかなって、思ったんだ」

 アルーグお兄様は、いつも公爵家を引っ張っている。
 それは、大変なことだろう。今回のことも、大変だったはずだ。

「心配はいらない。それが、俺の役割だ。それより、お前の方が大丈夫か?」
「え?」
「疲れたりはしていないか? 重要な役割を背負わせてしまったからな……」
「それは……まあ、少し疲れたかな」

 アルーグお兄様の質問に、僕は素直に答えることにした。
 今日は、少し疲れた。普段はしないことをしたからだろう。
 これを隠しても意味はないことはわかっている。体の弱い僕が、そういうことを隠すのはよくないことだ。

「アルーグお兄様、少し膝を貸してもらってもいい?」
「膝?」
「今日は温かいし、ここで昼寝したいんだ」
「俺の膝などでいいのか?」
「アルーグお兄様の膝がいいんだ」
「そうか。それなら、来い」
「うん……」

 僕は、アルーグお兄様に膝枕をしてもらうことをした。
 今日は頑張ったので、少しご褒美をもらおうと思ったのだ。
 普段、お兄様にこんなことはしてもらえない。だから、かなり特別感がある。
 こうして、僕はアルーグお兄様の膝の上で眠りにつくのだった。
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