公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

せっかくだから(エルーズ視点)

 僕は、公爵家の別荘で過ごしていた。
 せっかくなので、しばらくはここで過ごすことにしたのだ。
 忙しいので、お兄様は本家に戻っている。という訳で、ここには僕とお父様と使用人達しかいない。

「ふぅ……」

 別荘は、本家に加えてとても静かである。この静けさは、少し寂しい。
 だが、お父様はいつもそれを体験しているのだ。そんな寂しさを紛らわしてあげたい。そんな思いもあって、僕はここに留まっているのだ。

「それでね、僕はルネリアの友達のケリーと知り合ったんだ」
「そんなことがあったんだね……」

 僕は、お父様に公爵家であったことを話していた。
 今話しているのは、ルネリアの友達であるケリーと出会った時のことだ。
 お父様は、それを楽しそうに聞いてくれている。その笑顔を見るだけで、僕も嬉しくなってくる。

「エルーズ、実の所、この別荘の近くには、ルネリアがかつて暮らしていた村があるんだ」
「え? そうなの?」
「ああ、そのケリーという少女も、そこにいるんだろう? もしよかったら、帰る時に少しそこに寄ってみても、いいんじゃないかな?」
「ルネリアのいた村か……」
「もちろん、エルーズは体のこともあるし、無理をしてはいけないけどね」

 お父様の言葉に、僕は少し考えることになった。
 ケリーとは、あの時会った限りだ。それ以来、会ってはいない。
 そんな繋がりで、彼女の元を訪ねていいのだろうか。それは少し、疑問だ。
 それに、僕は体調のこともある。あまり無理をするべきではないだろう。

「エルーズ、君はケリーさんに会いたいと思っているかい?」
「え?」
「その気持ちは、何よりも大切なものなのだと僕は思っているよ。会いたいと思うなら、会いに行くといい」
「……」

 お父様のさらなる言葉に、僕は再び考えることになった。
 しかし、結論はすぐに出てくる。僕は、彼女に会いたいと思っている。それは、明白だったからだ。
 僕は、彼女のことを友達だと思っている。もちろん、あの時会った限りの仲でしかないのだが、それでもそう考えているのだ。

「……答えは決まっているようだね。それなら、僕の方から使用人に言っておこう。最近、優秀な執事が来てね。彼になら、君も任せられる」
「お父様……ありがとう」

 僕は、ケリーに会いに行くことにした。
 それが、僕の素直な望みだったからである。
 せっかく滅多に遠出しない僕が、こんな所まで来たのだ。少しくらい、冒険してみてもいいだろう。
 こうして、僕はルネリアが生まれ育った村に行くことにするのだった。
< 127 / 135 >

この作品をシェア

pagetop