公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

私達の未来

 私とサガードの婚約関係は、思っていたよりも早く決まった。無事に婚約できることになったのだ。
 それは、お母様やお兄様、それにサガードのお父様やお兄様が尽力してくれたおかげである。色々な人の努力のおかげで、私達は結ばれることができるのだ。

「まあ、これで一件落着という訳だよな……」
「うん、そうだね」
「なんだか、あまり実感は湧かないが……」
「それは……私達自身は、何もしていないからかな?」

 私とサガードは、いつも通り客室でまったりと話をしていた。
 婚約が無事に決まったことは、嬉しいことである。
 ただ、サガードの言う通り、そこまで実感はない。
 そもそも、私達は事態がどれ程大きなものなのかも把握していないといえるだろう。ぼんやりとしかわかっていなかったといった所だろうか。

「でも、これで私とサガードは無事に夫婦になれる訳だし、安心だよね?」
「夫婦……そうか。そうなるんだよな」

 私の言葉に対して、サガードは微妙な反応をしてきた。
 なんというか、あまりよくわかっていないという感じだ。どうして、こんな反応なのだろうか。

「……わかっていなかったの?」
「いや……なんというか、随分と先のことだから、あまりピンと来ないというか……」
「先のこと……そっか、そうだよね」

 サガードに言われて、私は少しだけ理解した。
 確かに、夫婦になるというのは私達にとっては随分と先のことである。実感できなくても、仕方ないのかもしれない。
 ただ、夫婦になるのは確実である。それは、王家とラーデイン公爵家でも約束されていることだ。

「私達は、どんな大人になるのかな?」
「そうだな……それは、まったくわからないことだな」
「サガードは、キルクス様みたいになるのかな?」
「いや、俺と兄上は、結構違うんじゃないか?」

 私は、ふと気になった。私達は、どんな大人になるのだろうか。
 私達の周りには、素敵な大人がいっぱいである。そんな人達のようになれるのだろうか。

「でも、きっとサガードは優しいままだと思うな……」
「……ルネリアだって、きっと根本的なことは変わっていないんじゃないか?」
「そうかな?」
「ああ、そう思う」

 サガードは、私に向かって笑顔を向けてくれた。
 その笑顔が眩しくて、思わず見惚れてしまう。彼と夫婦になれる。その幸せな未来を、私は改めて実感していた。

 ラーデイン公爵家に来てから、本当に色々なことがあった。
 だけど、その日々を今は幸福だったと言い切れる。
 それは、私が周りの人に恵まれていたからだろう。家族にも、友人にも、愛する人にも、私は恵まれていたのだ。
 私の人生は、きっと幸せなものだろう。こんなにも素敵な人達に囲まれているのだから、それは確実だ。
< 133 / 135 >

この作品をシェア

pagetop