公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

答えを求めて(イルフェア視点)

 私は、少し悩みながらもルネリアの部屋の前まで来ていた。
 これから、私は彼女と話すつもりだ。腹を割って話して、ルネリアが私をどう思っているか知る。私が前に進むためにも、そうしなければならないのだ。

「ルネリア……イルフェアよ。入ってもいい?」
「イルフェアお姉様? はい、どうぞ入ってください」

 ルネリアは、快く私を招き入れてくれた。その声は、心なしか嬉しそうに聞こえる。私の思い込みかもしれないが。

「どうかされたのですか? 部屋を訪ねて来るなんて……」
「え? ええ、その……あなたと少し話したいことがあって」
「話したいこと……何か、大事な話なのですね」
「……ええ」

 私の態度に何かを察したのか、ルネリアは少し真剣な顔になった。
 前々から思っていたことだが、この子は幼いながらも、そういうことには聡い。それは、躍動の人生を送ってきた影響なのだろうか。
 私は、ルネリアと向かい合って座った。少し緊張するが、彼女の不安そうな顔を見ていると、ちゃんとしなければと思う。

「あのね……ルネリアは、私のことをどう思っているのかしら?」
「どう思っているか?」
「あなたの素直な感想を聞かせて欲しいの……私は、それが知りたい」
「……」

 私の言葉に対して、ルネリアは何も言わなかった。ただ、それは理解していないという訳ではないだろう。なぜなら、彼女は考えるような仕草をしているからだ。
 そのまま沈黙が続く。ルネリアの答えを、私はただただ待つ。

「よし……!」
「え?」

 どれくらい時間が経っただろうか。もしかしたら、それは一瞬だったのかもしれない。ただ、私にとってそれはとても長い時間に思えた。
 その沈黙を振り払うように、ルネリアは動いた。彼女は、椅子から立ち上がったのだ。

「イルフェアお姉様、失礼します」
「え?」

 どうして立つのだろうか。そう思っていた私の胸に、ルネリアは飛び込んできた。
 私は、それを茫然と受け止める。何が起こっているのか、さっぱりわからない。

「ルネリア……どうしたの?」
「えっと……多分、こうすることが答えになるんじゃないかと思ったんです」
「答え……」

 ルネリアの言葉に、私は彼女の意図を理解する。
 確かにそうだ。これは答えである。どんな言葉よりもわかりやすい答えだ。
 私は、ルネリアの体に手を回す。そしてそのままそっと彼女を抱きしめる。その温もりを噛みしめながら。

「お姉様が何に悩んでいるのか……私には、それが完璧に理解することはできません。でも……私はお姉様のことが大好きですよ」
「……ええ、私もよ」

 私はルネリアとしばらく抱き合った。
 こうして、私の中にあった憂いは消え去るのだった。
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