公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

姉の婚約者

 私は、イルフェアお姉様と一緒に王城に来ていた。
 なんでも、お姉様の婚約者が私に挨拶しておきたいそうなのだ。
 私が公爵家に来る前に決まっていた婚約だったため、他の人には一通り挨拶しているらしい。それなのに、私に挨拶していないのは変だから、挨拶をしたいということのようだ。
 今は、客室にて、その第二王子を待っている。お姉様の婚約者は、この国の王子様なのだ。

「王子様か……」
「ルネリア? どうかしたの?」
「あ、いえ、その……今まで、雲の上の存在でしたから、その人に挨拶をされるというのも変な感じで……」
「ああ、そういうことなのね……」

 正直な話、私はとても緊張していた。これから会うのは、お姉様の婚約者で、王子様である。そんな人物と会うのに、心穏やかでいられるはずはない。

「でも、大丈夫よ。キルクス様は、優しい方ですから」
「そう……ですよね」
「え?」
「イルフェアお姉様の顔を見ていれば、わかります。キルクス様がいい人だということは……」

 キルクス様は、いい人である。それは、もうわかっていることだ。イルフェアお姉様の彼を語る時の顔が、それを教えてくれている。
 そもそも、私に挨拶をしておきたいという時点で、その人が真面目で誠実であるということは確実だ。普通なら、突然現れた隠し子に挨拶しようなんて、思わないだろう。

「……失礼する」
「あっ……」

 そんなことを話していると、部屋に一人の人物が入ってきた。
 その人は、目つきの鋭い若い男性だ。なんというか、思っていたよりも顔は怖い。

「待たせてしまって申し訳ない。そもそも、本来ならこちらから出向くべきことであるというのに……」
「あ、えっと……お気になさらないでください」

 私に向けて放たれた言葉に、私は困惑した。緊張で、なんと言えばいいかよくわからなくなったからだ。
 なんとか、言葉を発することはできたが、これで合っているのだろうか。イルフェアお姉様もキルクス様も何も言わない所を見ると、特に問題はなかったように思えるのだが。

「さて……私の名前は、キルクス・アルヴェルド。このアルヴェルド王国の第二王子だ」
「ルネリア・ラーデインです」
「ふむ……知っての通り、私は君の姉の婚約者だ。これから、どうかよろしく頼む」
「は、はい……よろしくお願いします」

 キルクス様は、私に対してとても穏やかに対応してくれた。
 初めは怖いと思っていたその顔も、だんだんと優しく見えてきた。それは、実際に話して、彼がとてもいい人だとわかったからなのかもしれない。
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