公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

僕から見た二人(エルーズ視点)

 僕は、今日も窓から庭を見つめていた。昨日の会話から何か起こると思っていたからだ。
 予想通り、ルネリアとダルギスさんは面白いことをしていた。ウルスドお兄様の目の前で、昨日と同じやり取りをしたのである。
 それにより、ウルスドお兄様は何かを掴んだようだ。婚約者であるクレーナさんと真剣な顔で会話していため、恐らくそうなのだろう。

「なんだか、僕の知らない所で、皆色々としているんだなあ……」

 僕は、その様子に少し寂しさを覚えていた。
 あの場所に、僕もいられたら、そんな考えが思い浮かんできたのだ。
 だけど、それは許されないことである。僕は、あんな風に健康ではないのだから。

「どうして僕は……」

 僕は、生まれた時からこうだった。人よりも体が弱かったのだ。
 どうしてそんな風に生まれてしまったのだろうか。時々、そう思うことがある。
 だが、そんなことを考えても意味はない。それは、今までの経験でわかっているので、僕はそんな考えを振り払う。

「あれ?」

 そんなことを考えていると、眼下の庭で動きがあった。門の方から、一人の少年がやって来たのだ。
 その人物は、どこかで見たことがある。あれは、確か王子のサガード様ではないだろうか。
 しかし、どうして王子がこのラーデイン公爵家を訪ねて来るのかがわからない。確か、そういった用事はないはずだ。
 僕の耳に入っていないだけとも考えられるが、流石にそういうことがあれば教えてもらえる。ということは、これは突発的な訪問になるかもしれない。

「うん?」

 ルネリアとサガード様は、色々と会話をしていた。
 その会話の内容により、僕の予想は概ね間違っていなかったとわかった。
 だが、そこは問題ではない。問題は、サガード様のルネリアに対する態度だ。

「いや、どうなのかな? よくわからないけど……」

 彼の態度は、ルネリアに思いを寄せているかのように見える。確信は持てないが、恐らくそうなのではないだろうか。
 ただ、もし仮にそうだとしても、ルネリアはそれを理解していないだろう。あの顔は、そういう顔である。大方、彼女は友達と思われているとか、考えているのではないだろうか。

「……彼は大変かもしれないね」

 ルネリアは、基本的に純粋で優しい子だ。しかし、ほんの少し鈍感な所もあると僕は思っている。
 そんな彼女に恋をするということは、苦労するということだろう。しかも、彼は王子だ。そういった面も含めて、楽な道ではないはずだ。

「まあ、頑張って欲しいけどね……」

 僕はゆっくりと窓を閉めた。ルネリア達が、屋敷の中に入っていくのが見えたからである。
 二人が、これからどんな風になるのか、それはわからない。ただ、無事に結ばれた時には、祝福しよう。
 そんなことを思いながら、僕はベッドに寝転んだ。いつかルネリアから、いい話が聞けると信じて。
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