公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

打ち明けた時

 私は、サガードに自分の事情を話していた。
 私が公爵家の隠し子であるということ、最近公爵家に来たこと。全て包み隠さず話したのである。

「……そうだったのか」

 私の話を聞いて、サガードはゆっくりとそう呟いた。
 その絞り出すような声に、私は少し心配になってくる。これで、彼の態度が変わってしまうのではないかと。
 もちろん、サガードがいい人であることはわかっている。だが、それでも怖いのだ。

「……色々と大変だったんだな?」
「え?」

 そんな私にサガードは、そう言ってきた。
 その意味が、私にはすぐにわからなかった。彼は、何に対してそう言っているのだろうか。

「だって、そうだろう……母上を亡くして、公爵家に来て、大変だっただろう。俺は、そんなこと何も知らずにお前と接していた……それが、なんというか、情けなくてさ」
「情けない? どうして?」
「……俺は、お前の苦しみも立場も何も理解していなかった。何も知らずにへらへらしているだけだった。それがなんか、嫌なんだよ……」
「……そうなんだ」

 サガードは、真剣な顔をしていた。その身を震わせながら、必死に私にその思いを打ち明けてくれた。
 それは、言葉にならないものだったのかもしれない。だが、私には理解できる。彼の心が、伝わってきたのだ。

「ありがとう、サガード……サガードは、優しいね」
「そんなことはないさ……俺は……」
「ううん、優しいよ。だって、私は今、こんなにも嬉しいんだもん」
「そ、そうか……」
「うん、そうだよ」

 サガードは、優しい。私は、それを改めて実感していた。
 打ち明けられて、本当によかった。勇気をくれたリオネクスさんにも、感謝しなければならないだろう。

「リオネクスさん、ありがとうございます。あなたのおかげで、私はサガードに打ち明けることができました」
「いえ、私は何もしていませんよ」

 私のお礼に、リオネクスさんはゆっくりと首を振った。
 彼も、どこまでも優しい人である。そんな優しい人だから、お母さんはきっと。
 そこまで考えて、私は自分の考えを振り払う。それは、私の推測でしかないからだ。本当の所は、私にも未だにわかっていないことなのである。

「えっと……それで、先生はルネリアの母上の知り合いということなのか?」
「ええ、そういうことになりますね」
「……なんというか、すごい偶然だな」
「そうですね。私も、運命というものは色々と数奇だと思っていますよ」

 サガードの言葉に、リオネクスさんはゆっくりと笑みを浮かべた。
 確かに、私がリオネクスさんと知り合いで、そんな彼がサガードの家庭教師というのは、不思議な偶然である。
 そんなことを思いながら、私も笑みを浮かべるのだった。
< 46 / 135 >

この作品をシェア

pagetop