公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

最悪の結果(アルーグ視点)

 アルバット侯爵と話してから、俺は彼女について調査をすることにした。
 父の公爵家の仕事を手伝っている内に、俺も直属の部下といえるような者達ができた。その者達に頼んで、調べることにしたのである。
 それは、過去に決着をつけるためだった。結局の所、俺は彼女のことから目をそらし続けていたのである。だが、それはもうやめなければならない。
 なぜなら、俺は未来に進まなければならないのだ。婚約者や他の家族とともに紡いでいくこれからのために、過去のことは一度全て区切りをつけたいのである。

「もっとも、俺に未練があるというだけなのかもしれないが……」
「……アルーグ様、よろしいでしょうか?」
「ああ、入ってくれ」

 調査結果は、思っていたよりも早く出た。俺は今から、それを伝えられるのだ。
 正直、緊張している。長年抱えてきたこの屈折しきった思いが、俺の心を縛り付けてくるのだ。

「簡潔に、事実だけをお伝えします。件の女性……セリネアさんは生きています」
「そうか……」

 部下の最初の言葉に、俺は安心した。彼女が生きている。その事実は、朗報だ。
 だが、それだけではないのだろう。部下の顔が明るくない。それは、何かしらの暗い事実があることを示している。

「警察も、そのことはある程度理解していたようですが、男爵家の執事に懇願されて、彼女を死亡したとみなしたようです。借金がありましたから、彼女にとっては、その方が都合が良かったということなのでしょう」
「なるほど、そういうことか……彼女も良き、使用人に恵まれたようだな。だが、それだけではないのだろう?」
「ええ……その、彼女には娘がいます」
「娘?」

 部下の言葉に、俺は驚いた。だが、すぐに理解する。それが別におかしいことではないと。
 彼女の年齢を考えれば、子供の一人や二人くらいいてもおかしくはない。新しい人生で出会った人と幸せに暮らしているなら、それでいいではないか。

「そうか……幸せに暮らせているなら、何よりだ」
「……それが、その娘はどうやらラディーグ様との間にできた子供のようです」
「……なんだと?」

 先程とは違い、俺は部下の言葉にはっきりと驚くことになった。
 あの人と父上の間の子供。それが何を言っているのか、俺にはまるでわからなかったからだ。

「……娘の年齢や状況を考慮して、密かに娘の毛髪を回収して、鑑定しました。彼女は、紛れもなくラディーク様の子供です」
「……そうか」

 俺は、部下に力なく頷くことしかできなかった。
 本当の所、俺は少しだけ考えていた。父と彼女の間に、何かがあったのではないかと。
 酔っ払った二人の間に何かしらがあっても、おかしくはない。状況から考えると、その方が自然。そんな考えはあった。
 だが、それが本当であるというのは、色々と心にくるものがある。様々な感情が入り混じり、俺は訳がわからなくなるのだった。
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