公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

聞きたいこと(お母様視点)

 私は、息子であるアルーグの元に来ていた。彼から、色々と聞きたいことがあったからである。

「母上、どうかされましたか?」
「アルーグ……実は、あなたに聞きたいことがあるの」
「……なんでしょうか?」

 私の雰囲気で察したのか、アルーグは少し佇まいを整えた。
 相変わらず、彼は優秀である。母親としての贔屓目もあるのかもしれないが、つくづくそう思ってしまう。

「……セリネアから、私に宛てた手紙が出てきたの」
「……そうでしたか」
「あなたは……彼女のことを知っていたみたいね?」
「……ええ」

 私の問いかけに、彼はゆっくりと頷いた。
 その顔は、少し悲しそうである。色々な思いが、彼にそんな表情をさせたのだろう。

「私は、父上の浮気を知りながら隠していました。そのことについて、母上には謝罪しなければなりませんね」
「いいえ、あなたが何を思っていたかはわかっているつもりよ。あの時、こんな話を聞かされていたら、私はどうなっていたことか……」

 アルーグがどうして秘密にしたのかは、なんとなくわかっている。彼はきっと、二つの家族の生活を守ろうとしたのだろう。
 その判断が間違っているとは、私も思わない。むしろ、賢明な判断だったとさえ思える。

「あの子は……酔ったあの人に無理やり関係を持たされたみたいなの」
「ええ、そのようですね」
「……そのことは知っていたの?」
「……私は、彼女のことをよく知っています」
「……そうだったわね」

 私が気になっていたのは、アルーグの思いのことだった。
 彼は、彼女に対して好意を持っていた。それは、子供の憧れのようなものだっただろう。だが、それでもそれは紛れもない好意だ。
 そんな彼女が父親と関係を持った。それを彼がどう思っているかが、私は気になっていたのだ。
 遅いかもしれないが、もしそれで傷ついているなら母親としてフォローしなければならい。そう思ったのだが、今の彼の様子から考えると、そのことに対する踏ん切りはついているようだ。

「母上……私は、あなた程偉大な人を他に知りません」
「あら? 藪から棒に何かしら?」
「今回の出来事で、私はそれを痛感しました。あなたの子として生まれて、本当によかったと私は改めて思いました」
「アルーグ……ありがとう」

 アルーグは真剣な顔で、嬉しいことを言ってくれた。
 彼も、随分と大きくなったものだ。私は、改めてそのことを実感していた。
 近い内に、彼はこのラーデイン公爵家を継ぎ、結婚する。そんな彼の作る家庭は、何の不自由もなく幸せになって欲しいものだ。
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