公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

誰も知らない理由

「へえ、それじゃあ、二人は昨日一緒の部屋で寝ていたのか」
「はい、そうなんです」

 朝の支度を終えて部屋から出た私達は、ウルスドお兄様と会っていた。
 朝食を取るために食堂に向かいながら、昨日の事情を話すと、彼は優しい笑顔を浮かべてくれる。

「楽しかったよ。ウルスドお兄様も、今度は一緒にどう?」
「いや、それは流石に色々と問題があるんじゃないか?」
「問題? 何かあるの?」
「俺は、お前と違って男兄弟だからな。なんというか、変だろう?」

 オルティナお姉様の言葉に、ウルスドお兄様はそう答えた。しかし、お姉様の方はその答えにあまり納得していないらしく、その首を傾げている。
 彼が何を言いたいかは、なんとなくわからない訳ではない。同性と異性の兄弟では勝手が違う。恐らく、そう言いたいのだろう。

「ルネリアは、どう? ウルスドお兄様と一緒に寝たくない?」
「別に、私は構いませんよ」
「私も構わないから、何も問題ないんじゃないの?」
「いや、そういう訳にはいかないだろう。第一、三人で寝ると狭いんじゃないか?」
「大丈夫、ルネリアの部屋のベッド大きいもん」
「……確かに、なんかやけに大きかった気がするな」

 ウルスドお兄様は、そこで少し考えるような仕草をした。それは、私達と一緒に寝るということに対してではなく、私の部屋のベッドに対するものだろう。
 ウルスドお兄様も、オルティナお姉様も大きいというくらいなのだから、私の部屋のベッドは貴族にとっても大きいものということだ。
 私一人寝るだけなら、あんなに広い必要はない。なんというか、無駄に広いのだ。
 ただ、それが今回は役に立ったといえるだろう。二人や三人で眠っても、まったく問題ないというのは、利点かもしれない。

「確か、ルネリアの部屋はアルーグお兄様が手配したはずよ」
「え? 姉上?」
「あ、おはようございます」
「おはよう、お姉様」
「ええ、おはよう」

 私達の会話に、突如イルフェアお姉様が入ってきた。
 どうやら、三人で歩いているのを見つけて、追いついてきたようだ。

「おはよう……えっと、つまり、なんでベッドが大きいかは兄上に聞かないとわからないということか?」
「ええ、そういうことになるわね。まあ、お兄様のことだから、何か理由はあるのだと思うのだけれど……」
「ベッドが大きい理由ね……あんまり想像できないな」

 イルフェアお姉様の言葉に、ウルスドお兄様はまたも考えるような仕草をする。確かに、ベッドが大きい理由はあまり思いつかない。一体、アルーグお兄様は何を思っていたのだろうか。
 そんな風に和気あいあいと話し合いながら、私達は食堂に向かうのだった。
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