公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

朝食時の談笑

「ルネリアの部屋のベッドが大きい理由か……」

 朝食の際、私達はアルーグお兄様に例の件を聞いてみることにした。
 その質問に対して、彼は頭を抱えて少し苦い顔をしている。
 恐らく、それを決めた時のことを思い出しているのだろう。どうやらそれは、あまりいい決まり方ではなかったようだ。

「実の所……あれは、婚約者に押し切られたんだ」
「婚約者……カーティア様ですか?」
「ああ、いつだったか話の流れで、そうなったんだ。ベッドは大きい方がいい。大は小を兼ねる。そんなことを言われて、血迷った俺は言われた通り発注したんだ……」

 どうやら、あのベッドはお兄様の婚約者であるカーティアさんが発端のようである。
 それは、なんとなく納得できる。彼女には以前あったことがあるが、結構活発な女性だった。そういうことをいいそうな人だったのだ。

「あら? お兄様も案外、尻に敷かれているのね」
「……そういうことになるのかもしれないな」
「……姉上、今お兄様も、といったか? まるで、他に尻に敷かれている奴がいるみたいな言い方だが……」
「え? だって、ウルスドはそうでしょう?」
「いや、そんなことはない。俺は別に……」

 イルフェアお姉様の指摘が、何故かウルスドお兄様に飛び火していた。
 だが、ウルスドお兄様がクレーナさんに頭が上がらないのは公爵家において、既に周知の事実である。そのため、彼の他にイルフェアお姉様の言葉に違和感を持った者は誰もいないだろう。
 いや、ウルスドお兄様だって、心当たりがあるから突っ込んだはずだ。恐らく、自分でもそれはわかっていたのだろう。

「ベッドが大きすぎるというなら、新しいものを買っても構わないが……」
「いえ、そんな必要はありません。別に大きくて困ることはありませんから」
「そうか……」

 アルーグお兄様の言葉に、私は首を振った。
 ベッドを買い替えるなんて、とんでもないことだ。まだ全然使えるのに買い替えるなんて、それは間違っている。
 もちろん、公爵家にはお金はたんまりあるのだろう。でも、無駄遣いするのはよくないはずである。
 使えるものはとことん使う。私は、そんな平民としての考えを大切にしていきたいと思っている。よって、ベッドはあのままで構わないのだ。

「うんうん、ベッドはあのままでいいよ。だって、大きい方が一緒に寝られるし」
「一緒に寝られる? 何かあったの?」
「昨日、私はルネリアと一緒に寝たんだよ、エルーズお兄様」
「そうだったんだ。楽しそうだね」
「うん、エルーズお兄様も今度一緒に寝る?」
「……いや、僕は遠慮しておくよ。迷惑をかけそうだし」

 そんな風に思っていると、エルーズお兄様とオルティナお姉様がそんな会話を交わしていた。
 エルーズお兄様は、以前に比べると少し明るくなった気がする。最近はリハビリも頑張っているそうだし、その体質を改善するために頑張っているのだ。
 でも、今のエルーズお兄様の言葉は少し胸にちくりとした。なんというか、私はお兄様にそんなことを言って欲しくないのだ。
 そんな風な気持ちで、私は朝食を食べていた。美味しかったが、なんだかずっともやもやとした気持ちは消えなかった。
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