公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

愛情深い血筋(お母様視点)

「……あの子達も来ていたのね」

 私は、物陰からルネリアの部屋に入る三人を見ていた。
 それを見終わってから、反対側にアルーグ、イルフェア、ウルスドの三人を発見したのである。
 どうやら、考えていることは同じだったようだ。皆、エルーズが朝に言った言葉を気にしていたのである。

「一体、誰に似たのかしら……?」
「……失礼ながら、奥様かと」
「やっぱり……そうなのよね」

 メイドの返答に、私はゆっくりと頷いた。恐らく、これは私の血なのだろう。
 別に自分ではそう思っていないのだが、私はよく愛情深いといわれる。
 これくらい普通だろうと思っていることでも、友人やメイドからはそんな風に言われることが多々あった。そんな私の血が、あの子達には受け継がれているのだろう。

「別に、悪いことではないのですから、落ち込む必要はないと思いますよ?」
「ええ、それはそうなのだけれど……」

 メイドの言う通り、別にそれは悪いことではないはずだ。
 ただ、時々本当に大丈夫なのかと思う時はある。例えば、今回のことなんて、心配し過ぎていると思われるようなことなのではないだろうか。

「率直な意見を聞かせてもらいたいのだけど、私達のことをあなたはどう思っているのかしら?」
「どう思っているとは?」
「その……エルーズが朝食の時に言った言葉だけで、こんな風に集まっている私達のことを変だと思う?」
「……」

 私の質問に対して、メイドはそっと口を押えた。それは、笑いを堪えているような仕草に見える。

「……失礼しました」
「別に構わないわよ。笑いたいなら笑っても」
「いえ……申し訳ありません。ただ、あまりにも微笑ましかったというか……」
「微笑ましい?」

 メイドの言葉に、私は首を傾げることになった。微笑ましい。それは一体、どういうことなのだろうか。

「……家族皆でこうやって心配して、それが変じゃないか気にするのは、なんとも可愛らしい悩みだと思います」
「可愛らしい悩み……そうかしら?」
「ええ、皆さんはただただ微笑ましいと、私はそう思っています。変だと思ったことは……そこまでありません」
「そこまで、ね」

 メイドの答えに、今度は私が笑うことになった。
 要するに、私達には変な部分もあるのだろう。でも、それも含めて、彼女は微笑ましいと思ってくれているのだ。
 それはありがたいものである。どうやら、私達は使用人にも恵まれているようだ。
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